東北自動車道を北上し、見知らぬ土地へ単身赴任をした。引越荷物が
納まると、女房は早々に子供たちが待つ山形へ戻っていった。再び14
年目の単身赴任が始まる。単身赴任」は、日常生活から食生活、健康管
理のすべてを自分で気配りし、いかにさわやかで健全な生活を送るか、
特に健康管理には敏感だ。私には高血圧の持病があって掛かり付けのお
医者様から降圧剤をもらい、切らさぬように気配りをしている。これは
親譲りの本態製高血圧らしく、降圧剤は若い時分から服用していた。こ
の高血圧のほかには大して具合悪いところもなく、ついつい暴飲暴食、
不摂生が重なったりしたものである。
無病息災は昔のこと。医療機関が発達した今では、一病息災が健康管
理上もっともいいとされている。無病息災は確かに健康には相違いない
が、一病息災のほうが健康に自信がある人よりも、ちょっとした一つぐ
らい病気のあるほうが、体を大事にするので、返って長生きするという。
私の一病息災は月に一、二度、必ず先生様の問診を受ける機会があって、
しかも転々と赴任先が代わったので、多くの先生様の問診に出くわして
る。
見知らぬこの地へ赴任したとき、前の医者様からの紹介状を持って局
の隣りを訪ねた。40代ぐらいのやさしそうな先生で、すばらしい出会
いであった。
「局長さん、単身赴任で食事はきちっと摂っていますか?…便通は?…
たばこは吸いますか?……」
もちろん快速快便よ。たばこは吸わないし誠に品行方正だ。ただ食事
は???だね。
「酒は好きですか?どれぐらい飲みますか、毎日飲みますか?……」
「ハイ、ハイ、好きですね。毎日ビール一本。酒2合ぐらいでしょう。
上がりも夜の正午過ぎ(?)になることも、ときどきありますね」
と、私の答えは明るく得々と淀みがない。
「 そんなに好きなお酒が飲めなくなったら寂しいでしょう」
「 そうですね、人生半分でしょう」
「それじゃ、好きな酒人生を長くつづけられる方法を教えます。あなた
の場合、γ−GTPがちょっと高いほうですから週二日は必ず休みなさい」
と苛酷だが、それからも私の高血圧のことについて、親身になり一方
的ではなくいつも体調を聴きながら懇切丁寧に詳しく説明してくれた。
すばらしい医者様であった。
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