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PART4 「智恵子の面影に、湯のぬくもりが・・・」 | ||
著者 小山清春
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福島県の「岳温泉」へ湯治に。早春とはいえ、みちのくの3月は結構寒 |
記念館で見た、ふっくらとした色白丸ぽちゃの智恵子の |
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しばらくぶりに私まで、ふっと福島弁が甦る。 美人な日本の宿の女将さんは、さらりと私の話し相手になってくれる。ふ っくらとして色白で、丸顔の澄んだ目元は、先ほどまで心いっぱいにして いた智恵子の面影であった。安達太良山のこと、岳温泉は海抜600メー トルの高原にあること、霞が城のこと、特に智恵子のことについて話す女 将さんは、さわやかで智恵子本人かと錯覚するほど。 「女将さんは、もしかすると安達町生まれの、旧姓長沼でなぃんかぇ?」 などと聞いてみたりする。智恵子は旧姓長沼智恵子だから・・・。 「私は郡山生まれで、智恵子とつながりはないけれど好きなんですよ」 そう話す口元や目の輝きまで、智恵子の面影であった。 庭園の宿『松渓苑』での一夜の宿は、湯のぬくもりが体の芯までしみ、 心ゆくまで堪能できた人生の喜びのひと時でもあった。 きっとまた、誰かと連れ立って来て、静けさの中で智恵子と「智恵子の 話」をしたい。 |