インタビュー実施日 2003年8月4日


本日は、アルパイン技研株式会社の近江様にインタビューを実施させていただきます。
それではまず、御社の事業内容をお聞かせください。

 
事業内容は、「モービル・メデイアの未来をひらく」を基にアルパイン製品の開発・設計を行っております。
私が所属しているCADグループでは、基板の設計をしております。



アルパイン様との関係でいきますと、やはり商品としては車載品・オーディオ系ということになるのでしょうか?

  主にはそうですが、ビジュアル系・通信系などもあります。



それ以外に特に何かございますか? 

アルパイン製品の開発・設計ですので、製品設計からマニュアル作成部門まであります。



実際に、私共のALTER NET(アルターネット)は、電気系の読者が多いのですが、システム系のところを
お聞きしたいと思っています。御社ではプリント基板設計ツールというのは、どのようなものをご利用されておりますか?

 
現在、YDCさんのCADVANCEシステム、そして図研さんのCR5000システムを同じ割合で
使っております。



回路系はいかがですか?

 

回路系も同じです。




昨今、ノイズ解析という面ではシミュレータがありますけれど、そちらの方はいかがですか?

  昨今どんどんエッジレートが早くなってきていますからね。
我々基板設計部門としても解析技術を習得しなくてはいけないということで、数年前から、
解析技術の習得を行い、解析技術を取り入れた設計環境が整いつつあるという段階です。



基板設計の内製化比率はどうでしょうか?

  内製化の方が多いです。



海外にも設計拠点があるとお聞きしておりますが。

  はい、あります。中国の大連に開発センターがあります。



そちらも同じ体系なのですか?

  ええ、ほぼ同じ体系そして同じ環境で製品開発しております。



設計されている方も現地の方なのですか?

  基本的に設計するのは現地のメンバーです。
ただ、サポートはやはり必要です。



そうですね、わかりました。
その辺りで“日本での設計のやり方”と、中国というか“現地での設計のやり方”の違いはいかがですか?

  違いますね。そもそも、考え方に違いがあります。
俗に「日本の常識・世界の非常識」などと言いますが、やはり日本の文化・習慣・考え方を
押し付けるだけでは難しく、日本では「とりあえず」などという言葉をよく使いますが、このような
ものは全然通用しません。

日本の場合ですと、仕事が与えられたら、それをいかに時間内に効率良く終わらせるかを考え、
そして、分からない事があれば自分で調べながら業務をするというスタイルだと思いますが、
現地では、その様な考え方は通用しませんので、考え方を序々に変える必要があります。



今お聞きした改善点もありますが、御社の今期の重要改善課題を教えていただけないでしょうか?

  我々の部署では、先ほどもお話した様に、シミュレーション技術、高速伝送路に対応する
パターンニング技術の習得ですね。これらのノウハウを上手く横展開する仕組みなりシステムなり、
そういった部分の構築と、技術者のレベルアップ底上が重要課題です。

「予測する技術」を定着させることによって、上流では時間はかかるけれども、その後の工程を
少なくする事を目標にしながら活動し、成果が出始めてきたところです。



今年も続けるということですか?

  そうですね、グレードアップしながら続けていきます。


そういった問題点を解決するためのツールや、それらの導入につきましては、今後どういう方面に力を入れて
いかれるのでしょうか?

  ノイズシュミレータに関して今まではポストCAE、すなわち、設計完了後に解析を行っていましたが、
より上流にという部分でプリシミュレーションを導入いたしました。

今後は更に精度を高める解析ツールの導入を検討しています。
又、解析を行う上で重要なモデルの拡充と管理、そしてそれらの情報をリアルに入手出来る
環境の整備です。



他社との差別化についてはいかがですか?
業務上の特徴を教えていただけないでしょうか? 

  アルパインの製品としての差別化はやはり「音」へのこだわりという部分です。
車という限られた音場の中でより良い音を出すために、さまざまな部分で微調整が必要になります。
パターンをデザインする上でもスターサーキットと呼ばれる配線方法を取り入れる等の配慮をして
います。音へのこだわりは、アルパインの全製品の中に組み込まれています。


いろいろなツールを導入されて、ご利用されていると思いますが、EDAベンダーさんに対して、ご要望はおあり
でしょうか?いろいろなメーカー様とお付き合いがあるかと思いますので具体的に教えていただけないでしょうか?

  今後はグローバルで物事を考えていかなければなりませんので、グローバル対応が可能な体制を
構築して頂きたいという点です。又、グローバル展開時は分からない部分も多くありますので、
その辺もサポートして頂ければと思います。

又、日本流の臨機応変な対応が、我々ユーザーが求めているもとだと思います。
すなわち、迅速かつ柔軟な対応が取れるメーカー様とお付き合いをしていきたいと思っております。



近江様から見て、現在お取引されている協力メーカーさん、基板設計のメーカーさんへのご要望はいかがでしょうか?

  今、全体的に仕事量が少ない状況の中、協力メーカさんにお願いしたいことは・・・・・。
口幅ったい事を言うようですが、やはり、付加価値の追求。要は、この技術/しくみはどこにも
負けない。というものを追求して頂きたいと思います。それは、短納期設計でも低コスト化でも
いいと思いますが一つでもあれば、今後のビジネスに大きなプラスになると思います。
我々も同じで、どこにも負けない技術を今後も追い続けて行きたいと思います。


本日は、貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。


近江様、お忙しい中、ご協力いただきまして、本当にありがとうございました。
アルターシステム梶@松 永
2003年8月22日掲載