インタビュー実施日:2006年2月28日
インタビュー:アルターシステム 松永 慎一郎

▼長野沖電気株式会社様URL
http://www.naganooki.co.jp/
本日は、よろしくお願い申し上げます。
御社の会社の概要、業務内容を簡単にお教えいただければと思います。
一つは沖電気関係の情報通信機器の基板実装を中心とした生産が大きな柱にあります。
もう一つがEMS事業になります。05年度は、EMS事業の売上高比率が7割程度になります。
EMS事業は、以前は基板の設計・製造が中心だったのですが、最近はユニットや装置と
言った機器製造の設計・製造が大きく伸びてきています。
だいたい基板が6割、機器製造が4割という比率です。
EMS事業の中で客先というのは比率的に海外と国内ではどのようになりますでしょうか?
今は100%国内です。
海外メーカさまへの展開などはどうでしょうか?

海外は今のところ念頭においていないです。
ただ、日本のメーカさんが海外の工場で生産をされていて、その工場に入れるために、
物流費用を抑えたいと言うような案件や、その他色々な条件で海外進出を
というところに
対しては海外での生産を、現地のEMSメーカへの製造委託という形で対応させていただいています。

現在の従業員数はどれくらいでしょうか?
長野沖電気の社員が160名ですが、製造部門を分社化しておりまして、そちらが220名、
長野沖グループとしては、合計380名となります。その他、派遣社員がおりますので、
それを含めますと約500名近くが当社の中で働いています。

その他、技術提携している会社などはございますか?
沖電気グループの色々なところと提携をしていますが、設計につきましては、高崎市に
あります沖情報システムズ。基板につきましては、新潟にあります沖プリンテッドサーキット。
この2社と一番密接に業務連携しています。特に沖情報システムズの社長が当社の
社長も兼務しておりますから、緊密に連携をしています。
また、生産の方は沖電気グループ内の関連会社と提携していますが、いろいろと製品の
特性に合わせて分担して生産しています。基本的には基板は全て当社で作り、その後工程、
ユニットや装置などの機器組み立ては沖電気グループの方に任せるというような形で連携を
取っています。
今後の拠点として、海外展開の予定などございますか?
そうですね。15、6年前から業務を沖電気として出しておりましたWKKという会社と業務提携を
しており、製造委託している製品があります。今後はいろいろと海外市場に伸びる方向に
ありますから、自社工場を建てるなどいろいろと検討しなくてはいけないと思っていますが、
まだそのような構想を持っているという段階です。

EMS事業という中で、海外のEMSメーカさんもかなり参入してきておりますが、もしくは、
日本の中でもEMSメーカさんが出られてきておりますが、特徴といいますか各メーカさんとの
違いは、どのような部分でしょうか。

当社の特徴としましては、大きく2つあると思っています。まず一つめは、設計から製造まで
一貫してご対応出来る体制、そしてあともう一つは鉛フリー等の環境対応技術です。
設計から製造まで一貫してご対応出来る体制につきましては、沖電気グループ各社と
いろいろな連携を取り合って、設計の上流から製造の下流まで、あらゆる段階から
ご対応できるという体制を整えている事が一つの特徴だと思っています。
また、鉛フリー等の環境対応技術に対しては、それなりの実力を持っていると思っています。
各種学界や業界団体にも参加させていただいて、色々な情報交換をしながら、鉛フリーの
技術をさらに高めていっております。
設計の方もかなり上流から受注されていますね。
デザインをいただいたところからやらせていただいておりますし、逆にもっと下のレベルで、
回路図が出来たので「基板の設計からやってください。」とか、幅広くやらせていただいています。
比率的には、売り上げ比率ですと難しいのですが、工数的な面からですと、製造だけを
請け負っているというのが調達も含めまして4割、基板の設計・アートワークからやらせて
いただいているのが4割。残りの2割が回路設計より上流からです。
先ほど、鉛フリーの件が出ましたが、どれくらいの時期から鉛フリーの対応をスタートされたのですか。
1998年、鉛フリーのはじまる当初から、いろいろな業界団体あるいは学界の研究会に
参画させていただいていまして、鉛フリーの取り組みを始めさせていただきました。
一部のメーカさんでは独自で開発されたところもありましたが、当社の場合は、いろいろな
業界団体さんの一員となって標準化をしていく方向で考え、2000年の段階で標準の
鉛フリー半田が決定された時から、鉛フリーの実装ができるという体制を整えてきました。
その当時は、鉛フリー半田で実装できるEMSが少なかった為、いち早く、携帯電話の
フレキ基板の実装をさせていただきました。
実際に鉛フリーということで、部品もかなり厳しい状況にありますが、先ほどお伺いしたように
社内ではデータベースをお持ちということで、集めるということはかなり大変なのではないで
しょうか。どのような組織で対応されていますか。
そういった部品情報を集める為の専門部隊を設けて、費用と時間をかけて収集してきまして、
その結果、3万5千点ほどの当社で購入している部品については部品情報が全て蓄えられて
いる状態です。
では、設備的な面ですと、設計という分野ではどのようなCADツールをお使いでしょうか。
基板系のCADは、回路図エントリーCADはシステムデザイナー(SD)、アートワークCADは
ボートデザイナー(CR-5000 BD)とPWSと全て図研さんのCADを使っています。
メカ系の3D−CADでは、Pro−Eを使用しています。
シミュレーション関連はいかがですか?
シミュレーションは、IBISモデルを使用するQuietと、XTKを使用しています。
IBISモデルの一番の弱点はどうしても電源・グランドの影響と言ったコモンモードノイズの
シミュレーションが出来ないのですが、Quiet Expertというシミュレーターを使用して、
IBISモデルを使いながら、コモンモードノイズのシミュレーションにも対応しています。
EMIとかEMC系はまた少し別のツールでの対応ですか。
いいえ。基本的には一緒です。
EMI測定についても、沖関連会社の沖エンジニアリングにて公式サイトをご用意しています。
本庄の方には10メートル、高崎の方には3メートルのサイトを持っていますので、お客様からの
測定のご依頼内容に応じて、対応しています。
多品種、少量という中でどのような対応をされておりますか。
製造準備系のITシステムとしては、図研さんと一緒にやらせていただいているデジタルショップ
フロアーを使用しています。現在、取り組んでいるのは、品質情報のシステム化です。
実装後の不良情報といったものの収集とトレーサビリティーが取れる様になっていますし、
搭載している部品のロット管理についても、ある程度トレーサビリティーがとれるといったところ
まで出来つつあります。まだ完全といったところではないのですが。
それは客先から依頼があった時に行うのですか。
はい。今はそうです。
実装系のお話になりますが、実装ラインの設備の中核機種は?
富士機械さんを使っております。
そうですか。今現在何ラインほどお持ちですか?
一応8ライン社内で持っています。
他に協力会社等に貸し出しておりますので、全部で12ライン持っています。
実装できるデバイスは?
実装設備の能力としては、0.3mmピッチのBGA・CSP、0402チップ部品となりますが、
そこまでの部品が量産ベースで供給されていない為、量産実績としては、0.5mmピッチの
BGA・CSP、0603チップ部品となります。
今期、今後のビジネスアクションとして来期を含めて、どのような形でご計画を
されておりますか。(2006年度)
来年度に関してのテーマとしましては、昨年度導入致しましたクリーンルーム内での
ベアチップ実装をもとにしたモジュールの実装になります。ベアチップ実装だけなのかと
言いますと意外とそうでもなくて、光学系のCMOSセンサーやCCDセンサーを使って
いるお客様はどうしても高いクリーン度を求められています。防塵対策を目的として、
クリーンルームの中で実装するというお話をかなりいただいています。
今そういったお客様の製品を、何種類か実際にクリーンルームの中で生産しています。
携帯電話はどうでしょうか。
携帯電話のお話はまだいただいていませんが、現在生産中なのはデジタルカメラと光学系の
スキャナーのセンサーです。当然そのあと工程として、そのセンサーを使用したスキャナー
本体の組み立てのお話もいただいています。今後は、この様にセンサーの生産から
発生した製品を組み立てていくことが多くなっていくと思います。
その他にはいかがでしょうか。
その他には実際に本当にビジネスとして花が咲くかということが難しいところですけれども、
部品内蔵基板にチャレンジをしていきます。当社だけでではなく、ベアボードを製造して
います沖プリンテッドサーキット、あとは、半導体を製造しています沖電気のデバイス部門
の3社が一緒になって部品内蔵基板の開発を進めています。
そういった技術を必要とするメーカさんとも取引が増えて行けばよいですね。
そうですね。やはり高密度化して、より小さいものをと言うニーズは高いと思っています。
あるお客様の中には、部品内蔵基板を標準化し、チップと同じ様に実装できるようにして、
色々な基板に実装するといった案件を検討されているところもあります。


柳澤様、お忙しい中、ご協力いただきまして、本当にありがとうございました。
御社の今後のご発展を心より祈念しております。
アルターシステム梶@松永

2006年3月17日掲載