島田千里様

インタビュー実施日 2002年5月9日



はじめに・・・
島田様、お忙しい中、ご協力いただきまして、本当にありがとうございました。
この場をおかりしまして、心より御礼申し上げます。

  お忙しいところ、ありがとうございます。
早速ですが、今回のインタビューの目的であるJPCAショーの特集に入る前に、
御社の前期の動向を数字的・技術的な部分でお伺いしたいと思います。

  2001年度は、前半は順調でしたが、後半は、景気の低迷に、アメリカのテロ事件が
追い打ちをかけて、ユーザ各社様が、導入の様子見という状態になり、苦戦を強いられました。
しかしながら、このような状況の中でもなんとか利益は確保しました。
そして、今後の事業展開をにらんだ新製品開発投資を行い、今回のJPCAショーで
その成果をご覧いただけることになりました。

  では来月のJPCAショーに向けて、今期の新しいソリューションの概略をお聞かせください。

私どもの主力製品である「CADVANCE」はこれまで、全包囲的に、機能をツールの中に
取り込んで、基板設計には「CADVANCE」があれば、すべて出来るという方針で、製品を
開発提供してきました。しかし、世の中の動きを見ると、設計の会社間での分業化、社内
での分業化もありますし、また、生産の海外へのシフト、とくに最近見ておりますと中国への
シフトが加速してきています。
海を越えるような遠く場所が離れたところでの設計の並行開発が進んできております。

このような環境の急速な変化の中で、我々は、設計部分だけの開発効率ということではなく、
トータルの製品企画から開発、製造の期間短縮、部品を含めたコスト削減という、「部分
最適」から「全体最適」を焦点に、製品をリリースすることにしました。

また、YDCは、インターネットの創生期よりネットワークに取り組んでおり、「ネットワークのYDC」
といわれ、数々のネットワークシステムのコンサルティング、構築を手がけてきております。
とくに場所が離れて並行開発する場合は、ネットワークをいかに上手く利用するかも、大きな
ポイントです。

従って、回路設計者と基板設計者のコミュニケーションが益々重要になり、基板設計者
同士の協調作業が加速してきますので、「Collaboration & Communication」をコンセプト
として、新製品を今年のJPCAショーに展示します。


 
  その製品について、もう少し、お聞かせ願えますでしょうか?

今回JPCAショーで新製品CADVANCEε(イプシロン)シリーズを発表します。
εシリーズはツールとツール、人と人、企業と企業を円滑につなぐことによって、設計・製造
効率向上や設計期間短縮を図る事を目的に開発した新しいシリーズのツールです。
JPCAショーではεシリーズ第1弾として2製品を展示します。
その一つが、「Cadvance ε-Eye」という検図ツールです。
ε-Eyeは回路設計者とプリント配線板設計者間での検図と変更指示を目的とする
デザインコミュニケーションツールです。変更指示箇所を朱書きでファイル上に追加し、
変更結果を確認したら承認、そして、その履歴を管理できます。
簡単な操作、安い価格で、お手持ちのパソコンで動作します。
アウトソーシングが急速に展開している今、ε-Eyeを使うことによって検図作業をするために
必要な図面出図やチェック結果などの出力も不要で、CADVANCEの生データによるキャッチ
ボールが可能です。更に設計会社様には、コストのかかるハイエンドのCADシステムを導入・
維持する必要がなくなる事から、設計会社様、メーカー様双方にメリットのあるシステムかと
考えます。もう一つの製品については、新聞発表しますので、ご期待下さい。
JPCA弊社ブースでは、この2製品を展示しますので、是非、お越し下さい。


  ところで、最近、かなり電気・電子業界はCADのツールが
飽和しているというイメージがあるのですが、いかがでしょうか?

 

設計の部分をとらえると、あながちその見方は間違っていません。
しかし、製品開発は、ますます、期間短縮、コストダウンが求められています。
改善ポイントはまだまだあります。これまで培ってきたCADVANCE CADツールのノウハウを
生かし、ユーザ各社様の設計、開発、製造の各パートに最適なソリューションを提供して
いきたいと考えております。

また、コストや納期に大きく影響する部品の情報を集中管理し、ネットワークを通じて
検索を行い情報を提供し、設計の効率化に提供できるようなサービスなども検討しながら、
事業展開をすすめて行きたいと考えております。


  今、中国で設計・製造が多くなってきていますよね。
この時、コラボレーションツールやサービスは重要だと思いますが、この両方をソリューションとして
持っていくということでしょうか?

 

当然、それは視野に入れて進めていきたいと思っております。


 
  さきほど中国のお話しが出ましたが、各社が中国に設計を移管されるというお話しの際、
ツールを導入する時、日本とコスト差やサポートの件は、どのようにお考えですか?

 

私どものユーザである日本のメーカー各社様の工場進出も進んでおりますので、
サポート展開は早々にすすめております。
ただ、販売に関しては、日本と中国との価格差の問題があります。
また、地理的な広さなど、想像以上のものがあると思いますので、慎重に進めていく必要が
ありますね。


  わかりました。他のベンダーさんとの差別化はどのようにお考えでしょうか?

 

私どもYDCは、他のベンダー様と違った2つの特長があります。
まず、電子機器を設計開発している横河電機を親会社とし、現場の生産技術などを含む
広範囲のノウハウをCADツールに反映できること。
また、2番目に弊社は、製造業を中心としたシステムインテグレーションを長年
に渡って
手がけてきており、企業の基幹システムの開発を得意とするメンバーが多数おります。
YDCは、「Oracle」という世界トップシェアのリレーショナルデーターベースを日本に初めて
紹介した会社であり、また昨年2月から、日本オラクル社と基幹システムの構築で協業を
進めております。電子系CADの分野においても、サプライチェーンマネージメント、エンジニア
リングチェーンマネージメントの推進と統合化がますます進んでくると思われます。適切な
製品の提供やネットワークを含めた広範囲でのシステム提案を出来ることが、他の
ベンダー様と異なるところかと思います。

また、弊社の考えとして、コミュニケーションやコラボレーションのツールに関しては、弊社
だけのビジネスとして考えていないということです。オープンという視点を持っているんです。
弊社の足りない部分は、他のベンダー様のツールを組み合わせて、ユーザ各社様が、
タイムリーに最適な環境を整備できることを重視しています。


  最後になりますが、中期戦略、今期・来期以降の戦略について教えてください。

 

今お話ししたところと多少ダブりますが、基本的にはプリント基板、電子機器設計製造の
ノウハウを生かして、シンプルな機能でローコストなツール群のタイムリーな提供、
トータルでのソリューションの提供、電子機器設計開発のプロセスでのサービスの提供など、
従来のツール提供という視点からサービス、インテグレーションを含めた方向に動いていきたい
と考えております。


  今期の目標は前期に比べていかがでしょうか?

 

現状を見ていますと、まだまだ厳しいところがありますよね。
上期について言うと前期並みの厳しい状況かなと思いますが、下期あたりから、
我々が押しすすめている活動の成果が期待できるのではないかなと考えております。


  本日はお忙しい中、ありがとうございました。