インタビュー実施日 2002年3月8日
武 安 茂 美 様



はじめに・・・
武安様、お忙しい中、ご協力いただきまして、本当にありがとうございました。
この場をおかりしまして、心より御礼申し上げます。
アルターシステム梶@松 永

第1回(全2回)
  本日は、よろしくお願いいたします。
前回は、武安さんがCAE推進部にいらっしゃった時にインタビューをさせていただきましたが、
今回は新しい部署である『eデータマスタセンター』の業務内容の概略をお伺いできればと
思っております。

  そうですね、前回お話させていただいたのは、たしか2000年でしたよね。

  はい、ちょうど2年前になります。

当時、私はCAE推進部にいて主に電気系やPDM関係の仕事をしていました。
その頃、ちょうどセイコーエプソングループ全体のコード統合を目指した全社プロジェクトが
起きました。生産・販売のグローバル化が進み、その為の海外調達が増えてきている中で、
どうしても会社全体としてコードを一本化したいという社長からの指示があり、約2年半前の
1999年の11月にプロジェクトがスタートしました。

"コード"というのは誰が決めているのかということを考えた時、部品を決めるのは大部分が
設計者なので、そういう意味では「本プロジェクトを遂行するのはCAE推進部が一番適切
ではないか」、という上司からの指示で、これまでの仕事もやりながらコードプロジェクトを
担当することになったのです。

今回のプロジェクトでは "品目コード"といわれる「製品に関するコード」と「部品に関する
コード」と、主にB to Bで使用する相手の企業を管理するコード「取引先コード」、この
3つのコード体系整備を行おうということでプロジェクトがスタートし、今、最後の仕上げの
時期を迎えています。

ちょうど1年前、昨年の4月ですが、CAE推進部がやっていました「PDMの構築」「CADの
標準化」もほぼ終わりに近づいてきたこともあり、コード標準化の業務に専念することに
なりました。コードを元にした各種のデータや情報を管理する組織を作る、それが今の
職場の『eデータマスタセンター』という名前になりました。

コードプロジェクトで決定した統一コードの管理と、それに伴って生まれる派生データと
いうのはいろいろな種類があり、設計が使うデータ、調達が使うデータ、製造が使う
データなどを、一連でつながったデータのかたまりとして、実際にeデータマスタセンターで
管理をしていくことをメインの業務としています。


 
  もちろん日本国内だけではなく、ワールドワイドでサポートしているということですね。

そうですね。
実際、eデータマスタセンターとしてやっているものは、大きく3つ仕事があります。

1つ目は、コード標準化の話で、今取り組んでいる品目コードや、調達に関連するコード、
社内の人事コード、顧客を管理するコードなどがありますが、そのようなものが、ほとんど
日本と海外法人でバラバラなので、グローバルでコード標準化をしようということです。
グローバルのコード体系を作っていく中で、コード標準化を業務改革の1つのツールとして、
今後もどんどん拡大をしていきます。

2つ目は、人事や経理のような基本的に会社全体の基礎となるようなデータの管理を、
本社部門で行っておりますが、そのためのシステム構築・運用もeデータマスタセンターで
担当しています。

3つ目は、今までシステムやデータベースは個別・分散管理となっており、データバックアップ
なども含めて個別にメンテナンスしており、管理が非効率という問題があります。また、昨今、
地震の話題が出ていますけれども、大規模な地震の直撃により、全てのシステムが止まり、
データが破壊されてしまうような事も想定し、地震対策も含め、分散されているデータを
一箇所に集めてマスタデータ化し、会社の情報資産として一元管理し、そこに全ての
システムがアクセスするようなしくみを作ることです。


  わかりました。具体的な業務の中身についてご質問させていただきます。
約2年、コード統一関係の業務を行われているわけですが、その実績、また、どういう形で
展開されているのかをお伺いできますか?

 

そうですね、活動をスタートしたのは1999年の11月からでしたが、だいたいの大きな
ステップ論としては、約1年間かけてまずコード基準の検討・整備を行いました。当時の
コード体系は、事業部ごとにバラバラでしたし、海外の製造や販売法人もそれぞれ独自
のコードをもっているのが実態だったのです。実態調査として、それぞれのコード基準を
全部提示してもらい精査を行ない、その上で「これだったらいけるだろう」という基準案を
作りました。まず、国内の全事業部に合意をしてもらわなくては進まないので、その作業
に約1年かかったわけです。そして、昨年の3月にコード体系基準の制定ができました。

次のステップとして、基準検討・制定と並行して、各事業部・海外法人個別に切替
計画とそれに必要な体制も整えてもらいました。そして、去年の4月に第一次切替を
実施・基準の見直しも行ない、それ以降、この3月をタイムリミットとして、グループ
全体の切替を推進してきました。

3ステップ目というのは、これから約1年の期間を想定しております。
もともとコード統合というのは、業務改革の手段であり、その目的というのは大きく分けて
2つあると考えています。

1つ目は、会社経営が事業部制や法人制を中心にしており、情報がグローバルで
しっかりと集められないというところに着目しました。信頼できる調達データ・生産データを
まず経営の資産として集めていきたいということです。例えば今までグローバルで見ると
1ヶ月単位でぐらいしか情報が集まらなかったものを、「今日の売上げはどうか」
「今日の調達費用はいくらなのか」「今日の生産量はいくらなのか」について基本的
にはデイリーで情報を集める。これは社長の指示もあるのですけれども、これらを
きちっとしたマネージメントサイクルと回していこうという事です。
そのための1つがツールとして「コード統一」なんですね。まず、この目的に向けて、
関連するようなしくみ・システムの見直しをして活動を行っております。

2つ目に、状況が早く・正確に見えたら、今度は改革をしようということです。
例えば「売上げが見えたので、在庫が見えるだろう」、「在庫が見えたら、在庫削減
をしよう」。このような情報の連鎖の中から、会社としては在庫削減に結びつける
アクションをして行こうということです。また、外に支払っている部品の調達金額が
非常に大きく、会社としての業績改善のため調達金額の削減をしていかなくては
なりません。この実現のためには、やはり同じように「部品の価格はいくらか」
「それはどこから、どれだけ買っているのか」が分からなければいけない。この時に、
部品コードがグローバルで統一化された事が効いてくるわけです。調達金額の
削減に向けて『業務改革』をしようということで、調達改革プロジェクトという形で
活動がスタートしています。

つまり、3ステップ目は、「統一コード」と「情報インフラ」を使って効果を出すフェーズ
ということで、4月以降、業務改革に向けた複数のプロジェクト活動がスタートします。


  4月以降が3期目で、効果が現れるということですね。

 

ええ、そういうことです。


 
  1期目、2期目というのはインフラの整備が終わって切り替えをして・・・ということで、
そのリミットが今月ということですね

 

はい。


  来期の効果としては、そういった部品のコスト面がありますが、その他には何か狙いはありますか?

 

そうですね、あとはやはり「ビジネススピード」ということですね。


  商品設計を含めてということですね?

 

はい。
市場は、売れ方にしても価格にしても、どんどん変わるじゃないですか。
例えば、「ある日、競合メーカーのプリンタが発売された」とします。
今までは、「我社のプリンタの売上への影響は?」を知りたい時に、いちいち担当にメールを
出さないと情報が取れなかったわけです。ところが去年の12月からはデイリーで、海外も
含めて売上げが全部見えており、対抗メーカーの新製品の影響が即刻わかる様になっています。

市場での販売数が落ちてきたら、当然生産調整という問題があるわけですね。
今までリアルには分からなかったので、生産調整までに相当な時間がかかっていました。
このようなマネージメントスピードを上げて、早い判断をしていこうということです。
具体的に使っていくと、経営なりマネージメントサイクルを早く上げて、その結果として会社に
対するマイナス面の影響をなくすことができます。当然プラス面で考えると相手の手口を察して、
こちらは攻めもできるわけですから、経営としては戦略的に動けるわけですよね。

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